東貴博と服部加代の重大発表も落ち着くと、本題の第二回同窓会の打合せに入った。坂本群馬はこの時期、日本全国どころか、世界を飛び回っていたので、実行委員から外してもらった。また、貴博も選挙の準備で忙しくなるということで外れることになった。
前回、女子が実行委員に含まれていなかったことが、指摘されていたので、今回は加代と太田美津子にも実行委員会に入ってもらうよう頼んでみたところ、二人とも、快く承諾してくれた。実際、気の会うメンバーが集まれば、準備段階から楽しいものだ。
こうして、市原清介、設楽慎吾、佐々木哲夫、倉木雄太、服部加代、太田美津子の六名が実行委員を勤めることになった。この働き盛りの時期は、それぞれ多忙なのだが、(初回が楽しかったから、今回も楽しい会にしたい)ということで引き受けてくれたのだ。そして、委員長は、前回も大活躍だった哲夫に決った。
群馬は、哲夫と慎吾に頼み事があった。
「テツくん、シンちゃん、前回参加できなかった黒崎瞳ちゃんだけは、絶対出席にしてよ。何なら、開催日は彼女の都合に合わせてね」
中学時代、黒崎瞳のことが好きだったのだ。だが、当時はシャイだったので、話しもできなかった。もちろん、卒業以来、会うこともなかった。
「ハイハイ、分ったよ」
慎吾は軽く流したが、さらに続ける。
「シンちゃん、業務命令といっても過言ではないよ。仕事のほうは、ワシがフォローしとくから」
群馬がちょっとマジだったので、皆、少し引いていた。
仕事といえば、株の上場を控えたこの時期、群馬は、やけに慎重になっていた。以前のような講釈や法螺話しもすっかり影をひそめていたのだ。このメンバーは、そんな群馬の立場も理解していたのだが、ついに倉木が言った。
「群ちゃん、今の立場も分るけど、昔みたいに法螺話しが出ないとつまんないよ。俺ら、今更、群ちゃんとこの株でどうこうしようなんて思ってないんだからさ」
倉木は群馬にとって恩人である。今でこそオモパロスといえば、上場間近の大企業だが、まったく無名の時代に1,000万円も出資してもらったのだ。
「そうだよね。このメンバー相手にインサイダーもへったくれもないよね」
続けて、
「先日、勝さんにも、ちょっと話したんだけさぁ・・・」
農業革命について語り始めた。(待ってました)とばかりに皆、面白がって耳を傾けていた。この時、群馬は、この革命を哲夫に手伝ってもらう時がくるかもしれないと感じていた。また、ひょっとしたら、清介のチカラも必要になるかもしれないという漠然とした思いもあった。
続いてカルチャーについての話しも興味深いものだった。音楽・ファッション・芸術などのカルチャーを世界市場で有効に絡めていかなくてはいけないという内容だ。これには特に美津子が感心を示していた。
そして、支払いを済ませた群馬に、皆が割り勘分を渡そうとすると、いつものキメ台詞がでた。
「金なんか持ってるヤツが出せばいんだよ」
「あの文無し群ちゃんが、ここまで出世したか〜。でも、まだまだ貸しの方が大きいよ」
貴博が言うと、笑いが起こった。
後日、群馬は、管理していた同級生の住所録データと同窓会の通帳を慎吾に渡した。倉木がいるから大丈夫だろうとは思ったが、何かの役に立てばと、少しだけ通帳に足しておいた。
「じゃ、シンちゃん、頼んだよ。瞳ちゃんの件」
慎吾は(そこかよ)と思いながら、苦笑していた。
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