百匹目の猿現象と共生社会

百匹目の猿現象というものをご存じでしょうか?

私は、つい最近、船井幸雄さんの著書で知りました。

面白い話しだったので、ご紹介したいと思います。

宮崎県の串間市に、幸島(こうじま)という無人島があります。そこに数匹の猿がいました。この猿が国の天然記念物に指定され、昭和23年(1948年)に京都大学が中心となって餌付けをはじめました。苦労の末、その4年後に成功しました。

しばらくたってから、イモちゃんというメスの若い猿が1匹、川の水でイモを洗って食べ始めました。そうすると、きれいに泥がとれるうえに食べやすくなったようで、まわりの猿もどんどんマネをしはじめました。

ちなみに、このときにマネをしなかったのは、年配のオスの猿だけだったそうです。なんだか人間も同じようなところがありますね。変化を嫌うのは、年配の男性に多いですから。

この猿の行動は、「日本猿のイモ洗い」として、学会などで発表され、世界でも有名になりました。

ところが、しばらくすると、大分県の高崎山の猿が、同じように水でイモを洗って食べるようになる、という不思議な現象が起こりました。

これは、「誰かがどこかでよいことをして、それをする人の数が一定数を超えると、時間と空間を飛び越えて他の場所にいる同類に伝わる」という現象で、このことを動物学者のライアル・ワトソンさんは「百匹目の猿現象」と呼びました。

さらに、英国の有名な生化学者であるルパード・シェルドレイクさんの研究などで、これが証明できる動物界の現象であることが明らかになってきたそうです。

私は、この百匹目の猿現象を知って、「目についたゴミは拾って捨てる」とうことをやろうと決めて、日常生活で実践するようにしております。これが広がって、世界がより美しくなることを願いながら続けております。

さて、幸島の猿には、まだ面白いエピソードがあります。

幸島は無人島ですが、たくさんの人が出入りしていた頃、猿たちは人間に襲いかかることが度々ありました。ところが昭和40年(1965年)頃から、幸島を自然のままの島にもどすこに決め、人間がなるべく行かないようにすると、猿たちに次のような興味深い変化が起こったのです。

●ボス争いがなくなりました。力は若い猿たちに比べると劣るのですが、本家筋の最年長のオスが順番にボスになるようになりました。

●争いがなくなり、エサを分け合って食べるようになりました。

●人に危害を加えないじつに大人しい猿になりました。

●同類結婚をしているにもかかわらず、奇形の猿が出なくなりました。

これらの変化をみると、人間の手が加わらない自然のままの正しい環境の状態にもどすと、競争などは起こらないといえそうです。

ですが、現在は競争社会です。

そもそも、人間は受胎をする際に、競争をして勝ち残った、たった1匹の精子のみが受胎に成功して、生まれてきているといわれています。この説が弱肉強食の競争社会を肯定する考えとなっているとも思えます。

ただ、これとは視点を変えた違う説もあるようなのです。

受胎をするときは、競争をするのではなく、一つの卵子に対して、多くの精子の中から一番良い子どもを残せそうな精子を選んで、みんなが応援し、サポートしてそれを受精させている、という説です。

どちらが真実かは、よくわかりませんが、後者のほうが素敵な説だと思います。

競争ではなく、多くの友たちの応援によってこの世に生まれてきたのだとしたら、今から彼らに感謝しなければなりませんね。

競争社会がすぐになくなるとは思えませんが、私たちが目指すべきは、競争などせずに感謝の心で溢れる共生社会なのだと考えます。