美容師の進藤英二と不動産会社に勤める新田彰は幼馴染である。
しばらく連絡を取っていなかったが、共通のSNSを利用するようになってから、コミュニケーションをとるようになっていた。
ある時、新しくアカウントを開設した「いちご」と名乗る女性が、このふたりに接近してきた。
いちごの日記は、さびしい女性を上手に演出するものだった。英二と彰は、それにまんまとくいついたのだ。
やがて、それぞれ、個別にやりとりをするようになっていった。いちごは、ふたりの隣町に住むOLだということがわかった。
いちごと英二編。
「結構、近いんですね。良かったら、今度会えますか?」
「いちごちゃんは寂しんでしょ?会ってもいいけど、やることが前提だよ。面倒くさいのきらいだし」
いちごと彰編。
「今度、どこかで会いませんか?」
「いいけど、いちごちゃんは、英二のほうがいんじゃない?」
「あの人はなんだかやりもくみたいで、会いたくないの」
「じゃあ、今度、一緒に飯でもくおう」
「はい。よろしくお願いします」
こうして、いちごは、彰と直接会うことになった。
彰は、いちごの話しを親身になって聞いていた。いちごには、彼氏がいるのだが、あまりかまってくれないので、寂しかったようである。
いちごは、やさしい彰にすっかり甘えていた。
「このあとどうする?ホテルでもいく?」
返事をするまでに、少し時間がかかった。
「ホテルはダメ。でも、もう少し一緒にいたい」
「じゃあ、俺の車の中で少し話そう」
「ありがとう」
彰といちごは、車の中でしばらく話し込んでいた。そして、いつの間にかふたりの距離はずいぶん近づいていたのである。
「やっぱり、行ってもいいよ」
「何?」
「ホテル」
同じ時期にSNSでいちごと知り合った英二と彰は、同じ目的を持っていた。その目的をストレートに表現した英二は成就できなかったが、ひと手間かけた彰は成就できたということである。
だが、帰りの車の中で、彰は衝撃の事実を知ることになる。
「新田さん」
「何?」
「ひとつ、話さなくちゃいけないことがあるの」
「どんなこと?」
「実は・・・、実はね、私の彼氏・・・」
「ん?」
「小池隆なの」
「えっ、マジ?」
「うん」
小池隆は、英二と同じく、彰の幼馴染である。いちごは、同じSNSに参加している隆の気を引くために、英二や彰に接近していたのだ。
彰は、その後、度々、いちごの相談にのっていた。隆はいちごに暴力をふるうこともあるというのだ。直接、隆に説教したこともあった。
こうして、しばらくの間、いちごと隆のゴタゴタ劇場に巻き込まれることになってしまったのである。
「これが一夜の代償か」
少しだけ後悔した彰であった。
iBSA大路薫
こんにちは。
大路薫といいます。
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