ランボルギーニ(メモ)

ランボルギーニ社はリーマンショック、新型コロナ禍を除けば毎年、前年比を上回る販売台数を誇っている。1998年、フォルクスワーゲングループがランボルギーニ社を買収した年、販売台数は年間231台に過ぎなかった。日本で、ではなく、世界で、だ。そんなランボルギーニ社の2023年度の販売台数は1万112台だった。ランボルギーニ社としては初の1万台突破である。

躍進を続けるランボルギーニ社の10年前の販売台数は2530台だった。分かりやすい比較対象を挙げると、10年前のフェラーリの販売台数は7255台であった。当時、フェラーリのほうがほぼ3倍売れていたが、現在では1.35倍までその差は縮まっている。いずれのメーカーも需要より供給を絞りながら、である。

「ウルスはSUVのカタチをしたスーパーカーに仕上がっています。そして、ランボルギーニにとって新しい顧客層の開拓に繋がり、なかにはウルス購入からランボルギーニのファンになって頂いてウラカンやアヴェンタドールを購入なさる方もいらっしゃいます。ご参考までに、ウルス登場時のデータでは、ウルスはウルス購入者の6割の方にとって“初めてのランボルギーニ車”でした」とアウトモビリ・ランボルギーニのHead of Japan、ダビデ・スフレコラ氏。

「我々にとって販売台数を増やすことは主目的ではなく、結果として販売台数が増えているに過ぎません。ディーラーに足を踏み入れてからのカスタマー・エクスペリエンス、ご購入頂いてからのOne to One カスタマー・リレーションシップを築くことを大切にしていますし、需要が供給を上回ることを重んじています」とも。

One to Oneカスタマー・リレーションシップとは、ランボルギーニ・オーナーとディーラー、はたまたランボルギーニ社との距離感の近さを指すのだろう。「ランボルギーニデイ」、「ランボルギーニブルラン」といったオーナー参加型のイベントを今後も大切にしていく、と語っていた裏にはオーナーのフォローアップという目的があり、既存のオーナーを大切にする姿勢の表れを感じ取ることができた。

そんなランボルギーニ社の姿勢は最近、発表された「WELCOME BACK TO LAMBORGHINI」と「LAMBORGHINI ORIGINALI」2つのキャンペーン(6月30日まで)にも見てとることができる。両キャンペーンは、正規ディーラーに2022年10月1日以降チェックインしていないオーナーや、車両を工場出荷時(オリジナル仕様)へと戻したいオーナー向けのサービス。キャンペーン利用者は東京・六本木の「THE LOUNGE TOKYO」で開催予定のスペシャルイベントに招待されるそうだ。

ランボルギーニ・スペシャリストによる整備という安心・安全の提供であり、リセールバリュー向上にひと役買う、というのがランボルギーニ・ジャパン側の売り文句である。実は筆者は“最近のランボルギーニ車は壊れにくいから工場稼働率を高めるための施策か?”と穿った見方をしていたのだが、正規ディーラーの顧客リストには入っていないランボルギーニ・オーナーにも足を運んでもらいたい、とも明言していた。正規ディーラーの顧客だけでなく、日本における全ランボルギーニ・オーナーと繋がり、関係性を築きたいのだろう。大切な顧客と、大切な絆を紡いでいきたいという姿勢を見て取ることができた。

間もなくデリバリーが始まるV12ハイブリッドモデル、レヴエルトは今年と来年の生産枠は既に完売している。にもかかわらず、このようなランボルギーニ・オーナーの囲い込み策をするのは企業努力の表れで、今後もランボルギーニの快進撃は続きそうだ。

ランボルギーニが毎年公表している販売台数の内訳を見て見ると、直近3年における上位5国はアメリカ、中国(香港・マカオ含む)、ドイツ、イギリス、日本。ランボルギーニにとって最大のマーケットはアメリカで、2023年度は3000台を販売したそうだ。ちょっと気がかりなのは2021年度、2022年度に2位だった中国(香港、マカオ含む:935台、1018台)である。2023年度は唯一、前年比割れの845台に落ち込んだ模様だ。中国の景気が反映されているのだろうか…

なお、日本におけるランボルギーニ車は2021年度に447台、2022年度に546台、2023年度は660台と右肩上がりで、まさに“ブル”マーケットぶりを誇示している。

文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)