ソフトバンクの孫正義社長は、実質的な後継者としてニケシュ・アローラ氏を指名した。
ニケシュ氏はインド出身で、現在47歳。
Googleのナンバー2として実質的に経営を取り仕切っていた人物である。
ソフトバンクに参加したのは、2014年の7月からだという。
6月の株主総会で代表取締役副社長に就任する予定である。
今回の人選は、2010年に掲げた孫正義社長の「30年後、時価総額200兆円、世界トップ10の会社になる」という目標を達成するために、逆算方式で考えぬかれた結果であるという。
また、同年、後継者育成のためにつくった「ソフトバンク・アカデミア」で、孫正義社長は後継者の条件を「10年で時価総額を5倍にすること」と規定した。
当時のソフトバンクの時価総額は3兆円で、その後は約9兆円となっている。
9兆円の時価総額を今から5倍にするとなると、10年で45兆円にしなくてはならないことになる。
ちなみに、Googleは約44兆円で、世界第3位である。
日本一のトヨタでさえも約19兆円で、世界では20位前後。
世界トップ10の会社を目指すには、世界中の優秀な人材の中から後継者を選ぶ必要があったのだろう。
「今までは日本のソフトバンクが海外の会社に投資を行う立場でしたが、これからは第2のソフトバンクとして、世界のソフトバンクが日本に事業展開しているといった立場になりたい」
これは孫正義社長の言葉である。
これを“ソフトバンク2.0”と表現する記事があったので、ありきたりな言い回しだが、そのまま流用した。
さて、もともとソフトバンクは、ソフトの銀行という社名の通り、(アプリケーション)ソフトの卸業としてスタートしている。
だが、その後は、Yahoo! BBをはじめ、ボーダフォン日本法人買収による携帯電話参入など、通信事業が中心になっていた。
ちなみに、ボーダフォン買収前に球団を買収したのは、Yahoo! ブランドの影にかくれていたソフトバンクという社名を世に知らしめる目的もあった。
確かに、ソフトバンクは数々のイノベーションを起こして、今では日本の通信事業で業界トップに躍り出た。
だが、個人的にキャリアとしてのソフトバンクには、最近、魅力を感じなくなっていた。
おそらく孫正義社長の意識は、すでに国内の通信事業の先へ向かっていたのだろう。
そこで、今回の後継者発表。
有言実行の孫正義社長が言うように、元Googleのナンバー2と共に、これからは世界の(アプリケーション)ソフトバンクへと進化していくことを確信してる。
一時期、ソフトバンクモバイルは、ドコモやauに巻き帰されるかもしれない。
だが、これからは、国籍を問わずに、優秀な人材が世界のソフトバンクへ集まってくると予想される。
そして、世界を相手に別事業を展開するようになれば、国内の3つのキャリアの争いなど、ソフトバンクにとっては誤差の範囲になってしまうかもしれない。
そういえば、楽天の三木谷会長は、以前、社内の公用語を英語にすると言っていた。
その後、どうなったかはわからないが、ソフトバンクは、わざわざ宣言しなくても、自然とそうなるかもしれない。
改めて、孫正義という人は、ほんとうに我々と同じ生身の人間なのだろうかと思えてくる。
だが、やっぱり同じ世界の人間なのだ。
龍馬伝の話題など、ツイッターを通して身近な存在に感じていたころが懐かしい。
いずれにしても、人は身分相応でなくてはならない。
今の自分の立場を客観的にみて、大きな時流の中で世の中の一歩先をいく努力をしなくてはならないのだ。
雲の上の大きな存在が巻き起こす風を感じながら、今ここを一生懸命に生きるしかない。
世界平和という大きな夢をみながら。