電通の残業とものづくり

電通の違法残業に関する記事をたまたま目にした。

私自身も経験があるのでよくわかるが、クリエイティブな仕事は、時に時間の概念を超えてしまう。

そういう仕事は、だいたい締め切りや期限があるので、なおさらである。

それこそ、寝る時間さえおしい時期もある。

そう、いわば、良きものをつくろうとするクリエイティブ集団は、変人の集まりなのである。

だが、今思えば、そんな仕事に携わっているとき、そんな場所があったときは幸せだった。

例えば、黒澤明監督は、映画「赤ひげ」の背景のひとつで、決して映ることのない薬棚の中身にまでこだわった。

スタッフからすれば、そんなのどうでもいいことであるが、黒澤明としては、その場のリアルな雰囲気を撮りたかったのだろう。

ここに、ただのサラリーマンクリエイターか変人かの分岐点があると思う。

サラリーマンなら心の中で「そんなのどうでもいいからチャッチャと終わりにして早く帰ろうよ」とつぶやく。

変人黒澤明を尊敬するものや同調するものは、「そこまでこだわるとは、黒澤明監督はやっぱりすごい」と言って、すぐに薬集めに飛び回る。

さて、電通の話に戻ると、良きものをつくろうとすると、思いがけずに時間がかかることもある。

それには色々な要因があると思うが、変人のこだわりもそのひとつであろう。

ただ、彼らをうまく活用すれば、世界(少なくともこの国)が変わるかもしれないというのも事実だ。

なぜなら、彼らは変人(変える人)だから、良くも悪くも大いなるエネルギーを持っている。

そんな変人たちが、走り出したら誰にも止められないものである。

だが、恐らく、サラリーマンクリエイターが大多数。

そんな中で、変人とのバランスをうまくとっていくのが、電通経営陣の仕事なのだと思う。

まあ、それが、むずかしいところであるわけだが、、、

例えば、変人は、別会社にするか、フリーランスにするか、特別ルールをつくるか。。。

そもそも、業務内容自体がビジネスなのかアートなのかという根本的な問題にも発展してしまうし、変人の線引きもむずかしい。

いずれにしても、こうなると、もはや誤差の範囲でしかないかもしれないが、少しでも効率よく作業を進める段取りがサラリーマンクリエイターの仕事だろう。

今は資本主義の時代。

その中で、広告は大きな役割を担っている。

寝ることさえ厭わない変人とサラリーマンクリエイターが共に事を成すのはむずかしいが、社員ひとりひとりが、自分に合ったワークライフバランスをうまく保てるようなシステムをつくる必要があるだろう。

みんなが納得して気持ちよく働ける。

結局はそれこそが、効率よく良きものづくりをするための最短ルートなのかもしれない。

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