陸上400mハードル競技で北京五輪代表となった為末大選手などのスポーツ選手が動きを取り入れたことで有名になったのが「ナンバ走り」です。古武術の「体をねじらない」という考え方を表しており、最近注目されています。
「ナンバ」は右手右足、左足左手を同時に出す足の運び方のことです。昔の日本人が普通に行っていた身のこなしとされています。
語源は、歩きにくい場所を表す「難場」や、「南蛮」渡来によるとする説がありますが、よくわかっておりません。明治以降にナンバの動きは日本人からなくなりましたが、手を大きく振って足踏みする歌舞伎の演技方法「六方(ろっぽう)」や相撲のすり足に、ナンバの動きが残っています。
桐明学園大学教授の矢野龍彦さんは、このナンバの動きを研究し、大学の授業で学生に指導しています。
ナンバが生まれた背景について、矢野さんは「着物で生活していたためではないか」と話します。同じ側の手と足を出す動きを繰り返した方が、現代の歩き方よりも胴体をねじる動作が少なく、着物が着崩れないということが考えられます。
「ナンバ歩き」「ナンバ走り」は体をねじらないため、体への無理が少なく、楽な歩き方なのです。
平らな場所では楽なのかどうかを意識できなくても、抜け道や階段で試してみるとわかりやすいと思いますが、手と足を同時に出していくのが、楽な階段の上り方です。右半身、左半身を交互に倒すようにして、足を階段に乗せていくイメージです。
山登りの途中にきつくなると、無意識のうちに、前に出す足のひざに手を置く人は多いはずです。また、後ろ歩きをすると手と足の動きが同じになると思います。これらもナンバで説明できます。
じつは、ナンバ歩きは、右脳の活性化にも効果的です。思考にいきづまったら、ぜひ、ナンバ歩きをお試しください。いいアイディアが浮かぶかもしれません。
ちなみにある研究組織では、ナンバから現代のような歩行になった理由を「軍隊登場のため」としています。手と足を逆に動かすと思考回路が低下し、命令どおりに行動させるのに都合が良かったということです。
卒業式で、手と足を一緒にだして笑われていた子がいましたが、緊張のため人間本来の行動が出てしまったのかもしれません。
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